「多様性」ってなんなのか?朝井リョウさんの小説【正欲】を読んで

「多様性」ってなんなのか?朝井リョウさんの小説【正欲】を読んで

ワタルです。

昨今、頻繁に見聞きする言葉

「 多様性 」

なんとなく意味は理解してるようで、実は何も分かっていないのかも…?

今回は、そんな「多様性」をテーマにした小説の書評。

朝井リョウさんの著書「正欲」を読んでみました。
※下記、特に具体的なネタバレは書いてません。あくまで読み終えた自分の感想として、まとめております。

目次

【正欲】の内容

自分が想像できる”多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繫がりは、”多様性を尊重する時代"にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。

amazon 本書紹介より引用

【正欲】を読んだ感想・レビュー

「読む前の自分には戻れない」

本書にはこんなキャッチも付けられてますが、それも納得のストーリーでした。

登場人物毎に、異なる視点での「多様性」が描かれています。

まず「普通」ってなんなのか?

物事の捉え方・価値観って、ザックリいうと【2つ】に分かれると思ってます。

  1. 大多数
  2. それ以外

いわゆる、この大多数(割合が多い)のことが「普通」

例えば

  1. 大多数の男性は女性が好き
  2. 一部の男性は男性が好き

「普通」は、男性だったら女性のことが好き

もっと身近な部分、例えば、1番好きなラーメンとかだったら

  1. 大多数の日本人は醤油ラーメンが1番好き
  2. 一部の日本人は塩ラーメンが1番好き

「普通」は、日本人だったら醤油ラーメンが1番好き

世の中では、普通・普通じゃないって線引きが、日々色んな場面で行われています。

そして、大多数(普通)以外の人は → 普通じゃない・変わってると判断されることも多く,,,

この「普通」に該当する価値観ばかり元々生まれ持っている人もいれば、普通じゃない方の価値観をベースに生まれ持っている人もいる訳で,,,

もちろん、人に危害を及ぼしたり・法に触れる場合の「普通じゃない」は、よくないこと。ただ、それ以外(ただ少数派なだけ)ってそんなに悪いことなのでしょうか??

普通じゃないと、やっぱり叩かれやすい

悲しいかな、この「普通じゃない(少数派)」っていうことは、ネガティブに捉えられがち。

いわゆる大多数(普通)側の人が、何処か優越感すら漂わせながら、「いや〜それはおかしいでしょ〜、普通はこっちだよね」と 普通じゃない→普通 に訂正しようとする場面に、実際何度も遭遇したことがあります。

ただ、それも多様性。そういう意見もあって良いでしょう。

でも、言われた側としては「別に誰にも迷惑かけてないのに、なんで悪いことのように言われるんだろう。なんで、その普通であることの方が偉いことっぽいスタンスで話してくるんだろう」そんなフラストレーションを抱えることもしばしば,,,

【正欲】そんな大多数・それ以外、両者の葛藤を描いた作品

「多様性」ってなんなのか?朝井リョウさんの小説【正欲】を読んで
朝井リョウ:正欲

この小説では、そんな部分に焦点を当てて、しんどいくらいリアルに普通・普通じゃない人の視点から、色んな苦悩や葛藤を交えながら多様性を描いています。

その感情の描写がやたらリアルで,,,

胃をキリキリさせながら、一気に500ページを読み終えてしまいました。笑

※特に残酷な描写等はないので、その点はご安心を。

あくまで自分は、「普通じゃない側」に寄り添って読んでいたはずが、いつの間にか普通側の視点でも何処か共感している部分もあって、自分自身がよく分からなくなる瞬間も。

そんな感じで、これは小説(フィクション)ですが、読了後は実体験したかのような感覚に。

その感覚は心地良いものではありません。

でも自分の理解している多様性は、あくまで自分の中での多様性に過ぎないことを突きつけられたのは、学びになりました。

改めて「多様性」について、考えてみるきっかけにもなりますね。

wataru

シンプルに読み物として面白いので、気になる人は読んでみるのをオススメします。

「多様性」ってなんなのか?朝井リョウさんの小説【正欲】を読んで

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